地焼きを、冷凍で届けるということ

地焼きを、冷凍で届けるということ

お取り寄せの冷凍うなぎは、なぜ蒸してあるものが多いのでしょうか。 そこには、はっきりとした理由があります。そして嘉門は、その道を通っていません。

蒸さずに炭火で焼く地焼きのまま、冷凍でお届けしている。そのために何をしているのか、今日はその話をさせてください。

うなぎには、二つの流儀がある

同じ日本のうなぎでも、関東と関西では焼き方が違います。

Kanto
蒸して、焼く
手順
背から開き、素焼きにしてから蒸し、たれをつけて焼き上げる
味わい
余分な脂が落ち、口当たりが軽い。ふっくらとやさしい仕上がり
Kansai
蒸さずに、焼き切る
手順
腹から開き、蒸さずに炭火で焼き通す。これを地焼きと呼ぶ
味わい
脂と香りが身に残り、味が濃い。炭の香りをまとう

関東が背から開くのは武士の町で「腹を切る」を嫌ったから、関西が腹から開くのは商人の町で「腹を割って話す」を好んだからだと言われます。真偽はともかく、土地の気性がそのまま包丁の入れ方になったという話は、いかにも日本らしくて面白いものです。

どちらが上ということはありません。目指しているものが違うだけです。蒸しのやさしい口当たりが好きな方もあれば、地焼きの濃さを好む方もある。それでいいのだと思います。

嘉門は、地焼きです。ずっとそうしてきました。

地焼きには、冷凍という壁があった

地焼きの持ち味は、うなぎの脂と炭の香りが、身に残っていることです。蒸さずに焼き切るからこそ、脂が落ちきらず、味が濃く出る。

ところが冷凍は、放っておくと、まさにその脂と旨みを持っていってしまいます。

解凍したとき、受け皿に水が溜まっているのを見たことはありませんか。あれがそうです。地焼きがいちばん大事にしているものが、そこに流れ出てしまっている。

地焼きの脂を、
一滴も逃がさないために。

嘉門が向き合ったのは、この一点でした。

だから、凍らせ方を変えた

そもそも、冷凍の何が味を落とすのでしょうか。

氷の結晶です。

水は凍るとき、いきなり全部が固まるのではありません。まず小さな粒ができ、そこへ周りの水分が集まって、粒が育っていきます。この粒が大きく育つと、内側から細胞の壁を突き破ります。

壊れた細胞は、解けたときにもう水を抱えていられません。それがドリップ——解凍したとき、受け皿に溜まっているあの水です。あの水はただの水ではなく、うなぎの脂と旨みそのものです。

そして、この粒が育つ温度帯は決まっています。

氷の結晶が育つ温度帯
食品の世界で「最大氷結晶生成帯」と呼ばれる区間

+5℃0℃−5℃−20℃
↑ この 0℃ 〜 −5℃ で粒が育つ
家庭の冷凍庫
約8時間
この帯に長くとどまる。そのあいだ水分が集まり続け、粒は大きく育つ。細胞が壊れ、解けたときに水が流れ出る
凍眠
約10分
帯を一気に駆け抜ける。粒は育つ暇がなく、小さいまま止まる。細胞が壊れないので、脂と旨みが身の中に残る
※ この帯を通過するのに要するおおよその時間

つまり急速凍結が狙っているのは、ただ一点。この温度帯を、どれだけ短く駆け抜けるかです。

嘉門が導入したのが、凍眠という急速凍結の設備でした。凍らせて、眠らせる。その名の通り、味を起こさないまま止めてしまう機械です。

家庭の冷凍庫が8時間かけて通る道を、
凍眠は10分で抜けます。

同じ道のりです。ただ、通る速さがまるで違う。この差が、解凍したときに受け皿へ落ちる水の量になり、そのまま味の差になります。

そして嘉門は、焼き上がったうなぎを、炊きたてのご飯ごと、その場で凍眠に入れます。焼き上がりの脂、炭の香り、たれの染みたご飯。そのすべてを、その瞬間のまま眠らせています。

凍らせ方ひとつで、残せるものが変わります。ならば、残せるものは一つも落とさない。設備でしか越えられない壁でしたので、そこに投資しました。

それで、何が届くのか

嘉門が冷凍でお届けしているものは、三つです。

脂の濃さ

蒸す工程は、余分な脂を落として口当たりを軽くします。地焼きはそれをしません。うなぎの脂を身に抱えたまま炭火で焼き切るので、味が濃い。この濃さは、凍らせても薄まりません。

炭の香り

温め上がって蓋を開けた瞬間、まず香りが立ち上がります。あの匂いは、炭火で直に焼いたうなぎからしか出ません。畑中商店のたまり醤油で仕込んだたれが、その後ろから追いかけてきます。

たれの染みたご飯

嘉門のうな重は、うなぎだけを送りません。炊きたてのご飯ごと凍らせています。焼きたての脂とたれが落ちたご飯を、その状態のまま止めている。冷凍うなぎの多くは身だけで届き、ご飯はご家庭で炊くことになります。あのご飯までを含めて一膳だと、私たちは考えています。

脂と、香りと、ご飯。地焼きがいちばん大事にしているものは、凍らせ方さえ間違えなければ、ご自宅の食卓まで持っていけます。

だからこそ、解凍しないでください

ここまでお読みいただいた方には、もうお分かりかと思います。

冷蔵庫での自然解凍は、設備で防いだことを、ご家庭でやり直してしまう行為です。小さく止めておいた結晶が、ゆっくり解けるあいだに水を落とす。せっかく残した脂と旨みが、受け皿に溜まっていきます。

嘉門のうな重は、凍ったまま電子レンジへ。600Wで一身約5分30秒。それだけです。

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お取り寄せで、焼き方と凍らせ方を見分けるには

嘉門のものでなくて構いません。次にうなぎをお取り寄せされるとき、商品説明のこの二箇所を見てみてください。

一つめ|焼き方

「蒸し」「ふっくら」「箸で切れる」とあれば、蒸してから焼いたもの。軽やかな口当たりのうなぎです。「地焼き」「関西風」「直焼き」とあれば、蒸さずに焼いたもの。味の濃いうなぎです。

お好みの方をお選びください。この二つは優劣ではなく、まったく違う食べものだとお考えいただくのが近いと思います。

二つめ|凍らせ方

冷凍のものであれば、こちらの方が大事かもしれません。急速凍結について触れているかどうかです。

どれだけ良いうなぎを、どれだけ丁寧に焼いても、凍らせ方で旨みは流れ出てしまいます。手を入れている店は、たいていそこを書いています。

値段や産地より、先に見る

産地も値段ももちろん大切です。ただ、食べたときの印象を決めるのは、焼き方と凍らせ方です。同じ国産・同じ価格帯でも、この二つで別の食べものになります。

嘉門は岐阜・郡上大和で、蒸さずに炭火で直に焼く地焼きを守っています。手間のかかる方を選び続けている店です。その焼き上がりを、脂も香りもご飯も、そのまま眠らせてお送りしています。

郡上へお越しの折には、ぜひ座敷でも召し上がってみてください。同じ大将が、同じ焼き場で焼いております。

嘉門の冷凍うな重を見る
地焼きうなぎ 嘉門
岐阜県郡上市大和町徳永164番地2
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