うなぎは、どこで生まれるのか。

うなぎは、どこで生まれるのか。

うなぎは、どこで生まれるのか。 日本人がこれほど長く食べてきた魚なのに、その答えを人が手にしたのは、ほんの十数年前のことです。

『万葉集』には、夏痩せした知人に「うなぎを捕って食べなさい」とすすめる大伴家持の歌が残っています。千年以上も前から食べられてきた魚です。

それなのに、うなぎがどこで卵を産み、どこで生まれてくるのかは、長いあいだ誰にも分かりませんでした。今日は、その謎が解けるまでの話と、うなぎが日本にたどり着くまでの、長い旅の話をさせてください。

2000年、誰にも分からなかった

古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、うなぎは泥の中から自然に湧いてくると書き残しています。

笑い話のようですが、無理もありません。親のうなぎのお腹に卵は見つからず、生まれたばかりの稚魚を見た人もいない。そう考えるしかなかったのです。

日本で本格的な調査が始まったのは1973年。東京大学の研究船「白鳳丸」が、太平洋でうなぎの赤ちゃんを探しはじめました。

海は果てしなく広く、うなぎの赤ちゃんは小さい。1991年、マリアナ諸島の西の海で体長1センチほどの仔魚がまとまって採れ、ようやく「このあたりらしい」と絞り込めました。2005年には、孵化してわずか2日目の仔魚を見つけます。

そして2009年5月。夜明け前の暗い海で、白鳳丸は天然のうなぎの卵31個をすくい上げました。うなぎの仲間で天然の卵が見つかったのは、世界で初めてのことでした。

アリストテレスから2000年。
うなぎの謎が、ようやく解けました。

答えは、日本から2,000キロ以上も南の海

卵が見つかったのは、グアム島にほど近いマリアナ諸島の西の海。海の底から山がそびえる、海山と呼ばれる場所のあたりです。

日本からは2,000キロ以上。東京から沖縄までよりも、さらに遠い海です。

ちなみに、2005年に生まれたての仔魚が採れたのも、2009年に卵が採れたのも、どちらも新月のころでした。うなぎは月の暗い夜を選んでいるのかもしれません。

透明な柳の葉が、海流に乗ってやってくる

生まれたばかりのうなぎは、私たちの知っているうなぎの姿をしていません。透きとおった、平たい柳の葉のようなかたちをしています。レプトセファルスと呼ばれる姿です。

この小さな葉っぱは、自分の力で日本を目指すわけではありません。まず北赤道海流に乗って西へ流され、フィリピンの沖で黒潮に乗り換えて北へ。およそ半年をかけて、東アジアの沿岸まで運ばれてきます。

岸が近づくと、体は縮んで細長くなり、シラスウナギに姿を変えます。体長およそ6センチ、重さはわずか0.2グラム。つまようじほどの大きさです。日本では冬から春にかけての新月の夜、河口でこのシラスウナギを採ります。

うなぎの一生、六つの姿
育つにつれて、呼び名が変わっていきます
  1. マリアナ諸島の西の海

    新月のころの海で見つかった。日本から2,000キロ以上南

  2. 北赤道海流から、黒潮へ
    レプトセファルス

    透明な柳の葉のかたち。およそ半年、海流に運ばれて旅をする

  3. 冬から春、日本の河口へ
    シラスウナギ

    体長約6センチ、重さ約0.2グラム。まだ透きとおっている

  4. 河口から、川へ
    クロコ

    体に色がつき、黒っぽくなった稚魚

  5. 川や河口で、5年から15年
    黄ウナギ

    わき腹が黄色みを帯びる、育ち盛りの時期

  6. 生まれた海へ、帰る旅
    銀ウナギ

    目が大きくなり、体は銀色に光る。産卵の海を目指し、産卵を終えると一生を終えると考えられている

養殖のうなぎも、生まれは南の海

ここで、少し意外なことをお話しします。日本の池で育てられている養殖のうなぎも、ほぼすべて、あの南の海で生まれています。

養殖うなぎは、卵から育てているわけではありません。河口で採った天然のシラスウナギを池に移し、大きく育てたものです。つまり養殖のうなぎも、一度はあの長い海の旅を終えてきています。

卵から育てたうなぎを親にし、その親からまた卵を採る「完全養殖」は、2010年に日本の研究機関が世界で初めて成功させました。けれど稚魚1尾を育てる費用が天然の何倍もかかり、2026年5月にようやく数量限定で試験販売されたばかり。まだ一般には出回っていません。

人の手でうなぎの一生をまるごと育てるのは、それほど難しいことなのです。

誰かに話したくなる、うなぎの小話

養殖うなぎは、9割以上がオス

うなぎのオスとメスは、生まれつきではなく、稚魚のころに育った環境で決まります。そして養殖池で育てると、なぜか9割以上がオスになる。その理由は、まだはっきり分かっていません。

天然のうなぎでは、大きく育ったものほどメスである可能性が高いとされています。

うなぎの血には、毒がある

うなぎの血には、イクチオヘモトキシンという毒が含まれています。そのため、うなぎはふつう生では食べません

ご安心ください。この毒は熱に弱く、60℃で5分ほど加熱すれば毒性はなくなります。蒲焼きも白焼きも、しっかり火を通して仕上げる料理です。

雨のあとは、陸を這う

うなぎは皮膚呼吸が得意で、雨上がりなどには水から出て、湿った地面を這って移動することがあります。

鹿児島県では、高さ46メートルの滝を、濡れた岩肌をつたって登っていく天然のうなぎが確認されています。

長い旅の終わりに、郡上大和の水で

南の海で生まれ、半年かけて海流に運ばれ、河口から池へ。そうして大きく育ったうなぎが、嘉門の焼き場にやってきます。

嘉門では、仕入れた国産のうなぎを、すぐには焼きません。焼く日までの2〜3日、「古今伝授の水」で泳がせています。郡上大和の酒蔵・平野醸造が、酒の仕込みのために引いている水です。

そして焼く日。蒸さずに、炭火で直に焼き上げます。地焼きです。

2,000キロを越えてきた旅の、
最後の数日は、郡上大和の水で。

次にうなぎを召し上がるとき、少しだけ、南の海のことを思い出してみてください。いつもの一膳が、ちょっと違って見えるかもしれません。

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地焼きを、冷凍で届けるということ

嘉門は岐阜・郡上大和で、蒸さずに炭火で直に焼く地焼きを守っています。長い旅をしてきたうなぎを、焼きたての脂と香りのまま眠らせて、ご自宅へお届けしています。

郡上へお越しの折には、ぜひ座敷でも召し上がってみてください。

嘉門のうなぎを見る
地焼きうなぎ 嘉門
岐阜県郡上市大和町徳永164番地2
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