冷凍うな重誕生秘話
はじまりは、お客様の一言でした。
「入院しているおばあちゃんに、食べさせたい。」
おばあちゃんは、うなぎが大好物だったそうです。体が弱って入院してからも、よく「うなぎが食べたい」と言っていたと。
「嘉門のうなぎを、食べさせたいなあ。でも、遠方だから無理だよね。」
その一言から、冷凍うな重をつくろうと決めました。
試作の回数
120回以上
正の字で書くと、二十四個。そのあとも、続きました。
営業を続けながら、4か月。
炭火で焼いたうなぎを、ご家庭の電子レンジで、温めるだけ。その一箱ができるまでに、4か月かかりました。試作は、120回以上です。
お店の営業を続けながらの試作です。使える時間は、限られていました。遅い日は、深夜まで。
試作にも、うなぎを使います。うなぎは、原価の高い食材です。一回試すたびに、そのうなぎ代がかかります。それを、120回以上。
冷凍機選びにも、こだわりました。食材が凍っていくとき、おいしさを左右する温度帯があります。そこを、どれだけ早く通り過ぎるか。それで、冷凍のおいしさが決まります。そこで目をつけたのが、凍眠(液体凍結機)です。大手メーカーも採用している機械です。
そのぶん、高額です。買うかどうか、とても迷いました。
でも、本当においしいうな重をお届けしたい。それで、凍眠に決めました。
そして、真空の強さです。真空を強くすれば、日持ちはします。でも、強いとうなぎがつぶされる。
温めて開けると、うなぎがつぶれて、ふわふわ感がまったくない。
日持ちを取るか、ふっくら感を取るか。その境目を探して、真空の強さを0.5パーセント刻みで調整しました。0.5パーセント変えるたびに、うなぎを焼いて、真空にかけて、凍らせて、温めて、食べる。その繰り返しです。
ご飯も、同じです。多すぎると、真空のときにつぶされてしまう。だから重さを、10グラム単位で微調整しました。炊いたご飯は、冷ましきらずに、凍眠で一気に凍らせます。お米に水分が残るので、レンジで温めても固くなりません。
器にも、こだわりました。電子レンジで温める器です。素材を考えて、たどり着いたのが天然の木の折箱でした。大きさも、いろいろなサンプルを取り寄せて、凍眠に入る大きさまで考えて選んでいます。
最後に、温める時間です。同じワット数でも、メーカーごとに少しずつ違います。いちばんおいしく温まる時間を割り出すのは、とても大変でした。600Wで、半身は4分30秒。一尾は5分30秒。
うまくいった、と思っても、また違う課題が出てくる。そのたびに、一からやり直しです。
正直に言うと、辞めようと思ったことは、何度もあります。
それでも、続けました。
試作は、お店のスタッフにも、お客様にも食べていただきました。マリオットの支配人にも、試食していただきました。
4か月、120回を超える試作の末の、一箱です。
── 地焼きうなぎ 嘉門 大将 古瀬 要
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