うなぎの照りは、味噌の桶の底から生まれました

うなぎの照りは、味噌の桶の底から生まれました

うなぎの蒲焼きの、あの黒い照り。

あれを出しているのは、たまり醤油です。そしてたまり醤油は、もともと醤油として作られたものではありませんでした。味噌の桶の底に溜まった液を、もったいないからとすくい取った。それが始まりです。嘉門のたれの底にあるのも、同じ町の味噌蔵のたまりです。

たまりは、味噌の桶の底にあった

東海地方には、大豆だけで仕込む豆味噌があります。その桶の底には、味噌からにじみ出た液が溜まります。豆味噌とたまり醤油を一七七二年から造っている名古屋のイチビキは、たまり醤油の始まりをこう説明しています。

東海地方の特産品である「豆みそ」をつくる過程で、にじみ出た液体だけを取り出したのが、たまりしょうゆのはじまり

イチビキ(名古屋・創業一七七二年の醸造元)の説明より

ふだん使う醤油、つまりこいくち醤油は、大豆と小麦をほぼ半分ずつ使って仕込みます。たまり醤油は、ほとんどが大豆です。小麦を使っても少しだけで、仕込みの水も少ない。だから色は濃く、味は深く、注ぐととろりと落ちてきます。

醤油には規格で五つの種類があります。こいくち、うすくち、たまり、さいしこみ、しろ。このうちこいくちが八割以上を占めていて、たまりは、ほんのわずかです。

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全国で流通しているしょうゆのうち、たまり醤油の割合。ただし東海地方だけは十五%を占めます(イチビキの資料より)。

全国では二%。東海ではその七倍以上。たまり醤油は、いまも東海の味です。郡上も、その東海の内側にあります。

なぜ、たまりだと照りが出るのか

ここからが、うなぎの話です。日本醤油協会は、たまりの使いどころをこう書いています。

つけしょうゆに使われるほか、照り焼き、煮物、せんべいなどにも適しています。

日本醤油協会の「しょうゆの種類」より

照り焼きに適している。その理由は、たまり醤油の体つきにあります。

こいくちしょうゆと比べて糖分が多く、粘度が高いため、素材の表面にのりやすく良い照りが出ます。熱を加えると美しい赤みが増し、料理がキレイなべっこう色に仕上がります。

イチビキの説明より

とろみがあるから、たれが身の表面に留まる。糖が多いから、炭の熱に当たって色が立つ。蒲焼きのあの照りは、塗り重ねた厚みではなく、たまり醤油が火にあぶられて出した色です。

嘉門のたれは、一度だけです

嘉門では、焼きの終わりにたれへ一度くぐらせます。それで終わりです。その前に、みりんを刷いておきます。みりんはたれのノリをよくし、皮のパリッとした感じを残してくれます。

たれで、ごまかさない。

何度も塗り重ねれば、照りは簡単に出ます。けれど味はたれの味になり、うなぎの味が後ろへ下がってしまいます。だから一度だけ。あとは焼き色を見て、いちばん旨いところで串を上げます。

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たれの底にあるのは、同じ町の蔵

嘉門のたれのもとになっているたまり醤油は、郡上市大和町万場の畑中商店のものです。嘉門があるのは、大和町徳永。同じ町の中にある蔵です。

畑中商店は、百年以上この土地で味噌を仕込んできました。「宝暦みそ」と呼ばれる地味噌と、「地たまり」を作っています。

この蔵の仕込みには、よそではあまり見ない材料が入ります。麹の原料に、大麦を炒って挽いた「香煎(こうせん)」を使うのです。煮た大豆を冷ましてから、この香煎と種麹を混ぜていく。大豆、大麦、小麦、塩、米麹。岐阜県の紹介ページによれば、すべて国産です。

仕込んだあとは、機械で温めたりせず、郡上の気温の上がり下がりにまかせて一年半から二年寝かせます。「自然醸造」と呼ばれる作り方です。蔵の方は、こう書いていました。

昔ながらの製法を守り続けて次世代につなげていく為に努力しています。

畑中商店(郡上市観光連盟「TABITABI郡上」より)

嘉門がたれのもとに使っているたまり醤油の、原材料はこれだけです。

Ingredients
大豆/小麦/大麦/食塩

白焼きに添えている畑中商店のたまり醤油の原材料(食品表示ラベルより)。大麦が入るのは、香煎で麹を作るこの蔵だからです。

白焼きには、たまりをそのまま

蒲焼きにはたれを添えますが、白焼きにたれは塗りません。お届けするときに添えているのは、畑中商店のたまり醤油そのものです。

焼いた白焼きに、わさびと塩。あるいは、たまり醤油をほんの少し。味噌の桶から生まれた液が、炭で焼いたうなぎの上で何をするのか、いちばんよく分かる食べ方です。

名古屋のうなぎのたれも、たまり醤油とみりんで作ります。濃くて甘いたれは、蒸さずに焼いた身によく合う。地焼きとたまり醤油は、同じ土地で一緒に育ってきた組み合わせです(東と西の焼き方の話でも書きました)。

うなぎを焼く炭も、泳がせる水も、たれのもとになる液も、嘉門はこの郡上大和で手に入るものでやっています。あの照りは、よそから買ってきた色ではありません。同じ町の蔵が二年かけて育てた液を、炭の上で一度だけくぐらせた色です。

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嘉

嘉門は岐阜・郡上大和で、蒸さずに炭火で直に焼く地焼きを守っています。ご注文を受けてから一尾ずつ焼いて、焼きたての香ばしさのままお届けしています。

郡上へお越しの折には、焼きたてを座敷でもどうぞ。

嘉門のうなぎを見る
地焼きうなぎ 嘉門
岐阜県郡上市大和町徳永164番地2
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